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  • 執筆者の写真藤岡みなみ

価値ある人間になりたくない


価値ある人間になるものか


にんべんのよこのしましま 檻みたいじゃないか


自分でショーケースに入りたがる魚


切り身になって海を泳ぐ



「すべての人に価値がある」


これも一寸 同意しかねる


価値とか 価値じゃないとか


そのぎらぎら光る測量器を仕舞ってくれ


そしたらちょっと歩こう



なんでもない私で


なんでもない私をひとりじめする


9月の夜風が無料なように


本当に美しいものに値段はつかない


あなたには価値がない


本当に美しいから





  • 執筆者の写真藤岡みなみ

更新日:1月11日


月曜日のリハーサルが

火曜日の反省会が

水曜日のバックアップがほしい


木曜日の再放送が

金曜日のコピーが

土曜日のゲネがあってほしい


日曜日だけが本物


川で石を拾って

一番気に入ったやつを投げちゃって

こんなちっちゃい滝があるんだ

もう2度とここには来ないだろうね


本物の日曜日を

一生に一度だけください




  • 執筆者の写真藤岡みなみ

更新日:1月11日


みぞおちの隣に湖がある。深い。広い。濃い青の。


手をつけてみると、とても冷たい。

もしも肩まで浸かったら、芯まで冷えて動けなくなりそうな。

おばあちゃんは、とにかく寒いねん、と言った。


足首まで入ってみると、ひどく熱い。皮膚が赤くなる。

ずっと入ってはいられない。

やけどにずっと触れていたい気もする。


とても冷たいような、とても熱いような、そんな温度の湖がすぐそばにある。

心臓の横にある。

自分から入ってみたり、出たり、隣に座って眺めたり、見ないように背中を向けたりする。

湖に身体すべてを委ねるのは危険だとわかるけれど、この中にいたい気持ちもある。

任されている。


行ったり来たりしながら、さわれるようになっていくのか。

そんなのもおかしいよ、と言っている魚もいる。

憎たらしい青。忘れたくない青。



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